蛍光灯のひかりが嫌い

日記、たまに紀行

喫茶店勤務のこと、あるいは生活のことについて

 

茶店でのお仕事についてお話したいと思う。

 

 

茶店では私の他にも、いろいろな事情を抱えている人が働いていた。

新卒で就職したが数ヶ月で辞めて、その後ずっとフリーターをしている人。

年齢的に学生の年齢なのだが、訳あってずっとフリーターをしている人。

 

など。

 

みんな事情がある。

同じ職場に自分と似たような境遇の人がいる、という事実は、私にとって大きな希望だったし、はじめて自分の生き方を肯定してもらえた気がした。

 

会社という大きな組織に、属することが苦手な人たち

 

私は早くも仲間を見つけ、強い装備を身につけてパワーアップしたかのような気持ちになれた。

 

 

茶店の仕事内容をざっとまとめてみる。

 

まず、朝は開店作業から始まり、忙しいランチの時間帯に向けて仕込みの作業をする。

10時くらいになると、ケーキ業者が1日分のケーキを届けてくれるので、ショーウィンドウの中へ並べていく。(私はこの作業がだいすき!)

因みにこのケーキ業者さん、とにかく間違いが多く、ケーキの個数が注文と違っていたり、知らないケーキが混ざっていたりする。店長はポンコツ業者と呼んでた。

だけれど、ポンコツ!という割には、怒らないし、業者も変えようとしないので恐らく愛着があるのだろう。知らないケーキは販売できないので、従業員のみんなでたべたりした。すごくおいしかった。

 

ランチの時間になると、途端にお客さんの出入りが激しくなるため、配膳業務と片付けで、あっという間に2時間が経過してしまう。

お昼が過ぎると、すこし余裕ができるので、その間に掃除とか補充を行ったりする。

あとは、夜になったら締め作業をして退勤。

とまあ、こんな感じだ。

 

茶店勤務は、落ち着いていて、のんびりできるお仕事だと思っている方が多いと思うけれど(私はそう思ってた)意外とそうでもない。

特に、私は『それでも町は廻っている』というアニメ(喫茶店を舞台とした日常系コメディ)の大ファンなので、ほんのすこしだけ期待を裏切られたような気持ちになった。

 

あと、これは何週間か働いて分かったことなのだけれど、従業員が全員喫煙者だったのには心底驚いた。

茶店という場所は、自然と喫煙者があつまるのだろう、、

これは持論だが、煙草を吸う人って同じ喫煙者にすごくやさしい。妙な連帯感のようなものを常に感じてた。それぞれ、吸っている銘柄が違っていたのもおもしろかった。

 

 

 

さて。

 

ここまで聞くと、気になってくるのはやはり生活とお金のことだろう。

 

私は、一人暮らしフリーターのくせに、極力出勤はしたくないというわがままから(労働が嫌いというより、出勤が嫌い)シフトは週4勤務の8〜10時間労働にしてもらった。

 

気になるお給料だが、、生々しいけれど、四捨五入して約20万くらい。

もちろん贅沢できるような金額ではないけれど、フリーターでも案外稼げるもんだなあって給料明細みながら思ったのを覚えてる。それと、ひさしぶりの給料明細というものに、忘れかけていた”お金を稼ぐことのよろこび”を感じた。そっか、お金を稼ぐことってこんなに気持ちがいいんだ、としみじみ。

 

生活する上で、一番厄介だったのが年金等の支払いだ。

正社員の頃は直接給料から引かれていたけれど、フリーターだと自宅に領収書が届くため、毎月届くソレは脅迫状のように思えた。

ただ、年金の中にも、失業中あるいは生活が困窮している場合は、納付に猶予ができたり、減免や全額免除の申請ができるものもあるので、毎月の支払いに困っている方は、1人で抱え込まず、市役所に相談してみてほしい。

 

それから、失業保険。

もちろん、ハローワークへ行って失業保険の手続きもする予定だった。

だけれど、口座に振り込まれるまで2ヶ月かかると言われたこと、その間アルバイトができないこと、その他諸々の理由から申請はやめてしまった。

 

以上が、仕事を辞めた後のリアルである。

 

 

人に、生活の心配をされたり、後悔していないかと聞かれることがしばしばあるけれど、人生のお暇期間だと思って過ごしているので、後悔はしていないし、むしろまあまあ楽しくやっている。

 

できる限り、世間の当たり前に囚われず、奔放に生きてみたいものだ。

 

 

 

学生時代に過ごした夏のこと、あるいは「きみの鳥はうたえる」について

 

何年かぶりに、『きみの鳥はうたえる』という映画を観た。

 

 

じっとりとしていて肌に纏わりつくような生ぬるい映画だった。

 

雨で濡れた町や、早朝の清潔な空気、シンクに溜まった洗い物や床に落ちた吸い殻、空き瓶、枯れた花、食べかけのパン、新品の本の匂い。

どのシーンを切り取っても、まるで自分の日常を見ているような感覚に落ち入り、ふと、学生だった頃の中身のない日々を思い出した。

 


夏、きっかけは忘れたけど、あまり仲良くもない男女4人で花火を観に行ったこと。それから何となくつるむようになり、家で映画鑑賞をしたり、ドライブに行ったりしたこと。

あの時は確かに楽しかったし、若さを一番実感していた気がする。

夏が過ぎると同時に関係もフェードアウトし、今では疎遠だけれど、夏ってたぶんそういう季節なんだと思う。

 

 

 

仕事を辞めたこと、あるいは「凪のお暇」について

 

仕事を辞めてから、半年が経過した。

 

 

仕事を辞めてからは、とにかく逃げるように引っ越しをした。

理由は二つ。

元職場が最寄り駅にあったため、職場の人間に出会したくなかったのと、

毎日、同じところをぐるぐる回っているような、前に進みたいのになかなか足が進まないような、そんな惰性で続けている生活に嫌気がさしたからだ。

 

社会人だった頃のことは、正直あまり記憶がない。

記憶がないというより、思い出そうとすると(危険!これはダメな記憶だ!!)

と、記憶にブロックがかかってしまうような感じの方が正しいかもしれない。

 

仕事を辞めてからは、しばらく新しい情報を取り入れることが億劫になってしまって、

過去に好きだったものを、何度も何度も味わうように観たり、聴いたり、読んだりした。

人って、疲れている時ほど、同じものに執着してしまうんだと思う。

 

 

 

そんな中、読み返した作品の中で唯一、救われたものがある。

 

「凪のお暇」

 

という漫画である。

 

知っている方も多いと思うけれど、ざっと簡潔にまとめるとこうなる。

 

” 仕事を辞めて恋人とも別れた女性が、思い切って引っ越しをして、新しい日々をスタートさせる話 ”

 

というような内容だ。

 

正直、このテーマだけですでに泣きそうなんだが、凪ちゃんの貯金切り崩し生活の日々や、転職活動の回など、かわいくてポップな絵柄とは裏腹に、かなりヘビィーな内容となっている。(各エピソードについては、また後日綴りたいと思う‥)

凪ちゃんは自分の将来に迷いながらも、スナックでアルバイトを始め、少しずつ少しずつ人の輪を広げていく。

凪ちゃんのように、社会の域に囚われず、自己流の幸せを見つけようと努力している人を見ると涙が出てしまう。ああ、なんて愛おしい。

 

 

仕事を辞めてからは、縋るような気持ちで、この漫画を何度も何度も繰り返し読み返した。

そんな無職引きこもり生活が1ヶ月ほど続いたとき、ある転機が訪れる。

 

『よく行く喫茶店がアルバイト募集している!!!』

 

わたしのための求人かと思った。

どうせ人生は一度しかないのだし、私も好きなところで働いてみよう、そう思うようになったのだ。

すぐに応募し、その場で採用となり、次の週から働くことになった。

 

初めての喫茶店勤務。

現実逃避かもしれないけれど、身体的に、精神的に弱っていた私には、心の安堵が保てるステキな労働環境だった。

憂鬱だった明日に、少し楽しみができた。

 

私が働き出した喫茶店は、老舗の古い喫茶店で、店内はステンドグラスの窓や深いボルドーの椅子など、重厚感のある素敵な内装だった。おまけにBGMはクラシックときている。

 

基本シフトは、モーニングかランチかの二つで、特に私はモーニングの時間帯のシフトが大好きだった。

 

朝、新聞を必ず読みに来る常連のお爺ちゃん。珈琲を3口ほど飲んですぐ帰ってしまう人。大きな花束を持ってソワソワとだれかを待ち続ける男性。早朝からパフェを食べる女性。海の映像を見ながら瞑想(?)をする人など。

 

たしかに、そこにはそれぞれの朝があった。

知らない人の1日の始まりを覗き見ることができるなんて、なんだかとても特別なことのように感じた。

 

そんなこんなで、喫茶店勤務がその後数ヶ月続くのだが…

長くなりそうなので喫茶店でのお仕事については、また後日、詳しく綴りたいと思います。

 

 

 

 

そういえば、誰だったか、偉人の言葉に

「幸福とは、幸福をさがすことである」

というものがある。

凪のお暇のことを考えると、どうしたってこの言葉を思い出すのである。

もしかしたら、幸福を探そうとしているうちは、まだ幸福なのかもしれない。